Sirius's story

 

この物語は私小説、創作、希望が入り混じったお話ですが、シリウスや、他の天体の人々のことは、

私が今まで経験し、思い出し、コンタクトして知ったことが元になっています。

このお話を書こうと思ったのは、はっきりと自分の中の「シリウス」が目を覚まし始めたからかもしれません。

自分がシリウスから来たこと、多くの人をその星からこの地球に連れて来たことを今でもはっきりと覚えています。
今までにも私と共にシリウスから地球に来た魂を持つ方と再会をして来ました。

それだけではなく、シリウス以外の他の天体で共に過ごした縁のある方との再会も始まっています。

そんな日々から、この物語を書き始めることとなりました。

いわば私の宇宙の履歴と古代地球での転生の物語、そして遠大な備忘録です。
もしかしたら完結しないかもしれないこの物語、始めて行きます。

 

 

 

**シリウスからの歌声**



 冬の夜空に美しく輝くシリウス。

 中学生1年になった芳樹は理科の時間にシリウスの名を聞いた時、何かこみ上げる思いが胸を駆け上がって、その感情に授業中心が揺れ動いたことを大人なった今も鮮明に覚えていました。

 その授業を受けてすぐ彼の中学校には無かった「天文部」を友達3人で立ち上げる事になりました。

 もともと彼は体を動かすことが好きで水泳部に籍を置き、その中学ではエースとして活動していた体育会系の中学生でしたが、どこかに天文に関する興味をずっと持ち続けていました。

 水泳部に入ったのも、子供の頃から水遊びが好きで小学校に入ると毎年夏のプールの時間をそれはもう楽しみにする子供でした。
家族でゆくレジャーも海や川、湖と、きれいな水のあるところばかりを希望するので父親は山でのキャンプなどをさせたいとは思うのですが、彼が興味を持たないため、父親の実家である逗子の海辺の家で夏休み中過ごすことが彼の夏の習慣でした。

 とにかく綺麗で澄んだ海、水深のある透明な川の深みを見ると「ああ、飛び込みたい」そう思う、まるで河童のような水好きでした。
大人になっても、その思いはいささかも変わることなく、美しい水、生きた水、大きな水辺への思いは変わることなく続いています。
 中学に入って教科書でシリウスを知った彼は天文部を作ってすぐの夏休み、理科の先生に頼み込んで3日間屋上での夜間観測をした事があります。
家は近かったので夕方友人たちと屋上に集まって、明け方まで自分たちの天体望遠鏡を持ち寄って星たちの観測をしました。

 でもシリウス(おおいぬ座)は冬の星座なので、いくら探してもあるはずないのに知識のない自分たちはなんでだろうと頭捻った情けない天文部でした。
 理科の先生も当直の時来てくれ、シリウスがないとワイワイやっていた僕らをニコニコ見ているだけで、なぜ天球にシリウスが見つからないのかを教えることはしませんでした。

 さて、この天文部も言い出しっぺの彼が急激に興味をなくし、出来たばかりの剣道部に急激に興味が移ってゆき、尻つぼみ解散になるという体たらくを見せることとなったのです。

 でもシリウスという美しい響きは、少年から大人になるまでの間一度として忘れることのない、言い知れぬ懐かしさを覚える特別な言葉として心の中に輝いていたのです。

 プレアデス、アンドロメダ、北斗七星、オリオン・・
数ある天体の中で、いつも心に輝いていたシリウスでしたが「自分がシリウスから来た」ということは。、まだ地球外生命体とか、他の天体に文明があるということすら知らずにいたので、なぜシリウスという言葉に心奪われていたかわか利ませんでした。

 そしてそれから10年の月日が経ち、大学生となった彼が、バイト先の飲食店で、同じバイト仲間のある女性と知り合うことになります。
その娘はどこか懐かしさを感じる、目の澄んだとてもエキゾチックな雰囲気のある娘で自分より3歳下の20歳。

 特に人目を引くタイプでもなく、物静かで、あまり目立たないどちらかといえば地味で小柄な子でした。
でも彼には、何か言い知れぬ懐かしさがこみ上げ、初めて会ったその日から彼女に強く惹かれて行きます。

 

 

 初めて会った時に感じた、こみあげるような懐かしさがどこから来るのかはわからないまま、芳樹はこの娘と何としても付き合いいをしたいと思うようになります。
 彼女の名前が百合香と言う事をタイムカードを見て知っていました。
彼女は決してツンツンしているわけではないのですが、どこか近寄りがたい雰囲気があってアプローチをかけられません。
今日こそはバイト帰りに話をしようと朝起きて思うのですが、いざ彼女と顔を負わせるとそれが言い出せません。

 そんなことを繰り返しながら2ヶ月ほど経ったある日、偶然にもシフトの関係で二人ともに同じ時間にバイトが終わることになります。
これはもう「このチャンスは滅多にないぞ、ここで声をかけなければ!」と思い、意を決して店を出る彼女の後を追いかけます。

 その彼女の後ろ姿を見ていた時、不意に彼女の姿が別の姿に見えたのです。
周りの景色は薄ぼんやりとなって、肩まで伸びる黒髪が急に金髪に見えたのです。
 しかもそれだけではなく、バルーン袖のブルーグリーンのブラウスとキュロット姿だったはずの彼女の服装が、ドレープのたくさん入った真っ白い生成りの長いドレスで、足首に紐が巻かれたサンダル、頭は組紐で編み上げた髪に花冠という姿に変わっているのです。

 

 一瞬の出来事でしたが、芳樹は間違いなく彼女のその姿を見たのです。
そんな経験をしてしまったので、彼女に声をかける事にさらにハードルが高くなってしまいます。
 しかもそれ以上に、今まで声をかけられなかった理由というか、雰囲気がそこにあった気がしてならないのです。

 その頃の芳樹は人には前世というものがあるということをはっきりとは理解はできていませんでした。
ただ幼い頃から、自分にはこの人生ではない別の人生の記憶のようなものがあり、自分の知らない人生を過ごしていたことがあるのではないかということを、誰に教えられることもなくなんとなく気づいていました。

 また今は亡き祖母が自宅からほど近い場所で、一人でやっている占い師さんのところによく出入りしていて、幼い芳樹をしょっちゅう連れていったので、目に見えない世界に対する抵抗がなかったのかもしれません。

 それに彼の育った家庭環境が、そうした不思議なことに対するタブーの全くない家で
「外でカラスが鳴いていて、庭にネズミが出たよ、きっと近所で何かあるね」
などということを、感じるままに口にできる子ども時代を過ごしたことから百合香が見せたその不思議を、決して思い違いではなく、なんらかの理由で自分が知らない別の彼女の姿を見たのだと確信のようなものがあったのです。

 人通りのない通りでしたので、歩道に立ちすくむ彼を不審に思う人もなく芳樹はその場所に立ち尽くします。
でも、そうしていたら百合香がどんどんと先に行ってしまう、そう焦るのですが、足が前に出ません。
ところがそんな芳樹の想いが届いたように百合香が急に足を止めたのです。

 そして不意に振り向くと、芳樹の方に引き返し戻ってくるのです。
芳樹はドキドキで、焦りまくります。

 でも百合香は芳樹がそこにいることに気がつかないようで、何か考え事をしながら下を向き、お店の裏口に戻ろうとしているようなのです。
そこで意を決して芳樹は彼女に声をかけます。

「あの、百合香さん」

はっとしたように百合香は顔を上げ芳樹をみました。

「あっ、芳樹・・くん?」
「うん、同じ時間にバイト終わって僕も帰ろうと思っていたら百合香さんが振り返ってこっちに向かってきたんだよ」
「そうなんだ、ロッカーに忘れものしてしまったから戻ったの」

「ええと、あの、ああ、そうか、なんか急に振り返ったのでビックしましたのです」

内心しめたと言う思いとドキドキする想いが入り混じって言葉が変になっていることに芳樹は気が付きません。

すると百合香は満面の笑みで
「何その言葉!?」
と笑ってくれました。

思いの外ノリがいいことに少し安心し、次の言葉が素直に出ました

「あのさぁ、急いでる?帰りにお茶しない?」
「あ、うん、いいよ。ちょっと待っててね」

 そう言うと店に入った百合香がすぐ戻ってきます、手には何か風呂敷包みのようなものが。
聞くと母親が自宅でお茶の先生をしていて、彼女もやらされていること。
今日は母親に頼まれた茶道具を、知り合いのところから受け取って帰ることになっていたことなど話してくれます。

「さて、どこ行こうか?」
「どこでもいいけど、あんまり遅くはなれないから近くがいいかな」

バイト先に近い駅ナカにあるカフェで二人は話し始めます。

 

 

 二人のバイト先は四谷にあります。

 百合香の家は偶然にも芳樹が住む中央線の阿佐ケ谷駅から少し先、三鷹に住んでいること。
自分と同じ四谷にある大学に通っていて文学部にいること、自分たちのことなどいろいろと話し始めます。

 普段はぼんやりで、女の子とそんなに多く付き合った経験もない芳樹にでも、百合香が自分に好意を持っていることがなんとなく感じられ
「なんか恋の始まりか~!!」
などと浮かれたのもつかの間。

 そんな話を続けている内に、また急に不思議な感覚が浮かだのです。
デジャブのようなもので、二人が話している光景を、遠いどこかで経験した記憶のような思いが湧きあがります。
でも、その時には目の前の彼女の姿は、金髪の女性には変化していません。

 でもその不思議な感覚は先ほど幻のよう見た姿よりも更に強烈なリアリティがあってなりません。
芳樹はそれがとても気になり始め、せっかく百合香とお茶をして、できることならこの先・・ウニャウニャ・・のはずが

「ねぇ、話変えてもいい?」
「何?」
「あのさ、笑わない」
「うん、な~に?」

 百合香の目には、もしかすると芳樹が自分に好意を持っていて、それをコクってくれるのかなという小さな期待のような光が見えたのですが・・
芳樹にはそれを超えた彼女への興味の方が遥かに強くなってきて、百合香の好意を感じながらも、その一連の不思議を話さずにはいられなくなってきたのです。

「あのね、さっき百合香。あっ百合香って言っていい?」
「うん、いいよ、私も芳樹っていうね」

「で、百合香がお店から先に出た後、俺も後から追いかけるように出たんだよ。それで百合香の後姿見ていたら急に姿が違って見えたんだ」
「へぇ〜〜、どんな姿?」
「ええとね〜なんかギリシャ?の古い時代の髪とかも金髪で、今の百合香より背も高くてさ。だけどその姿を初めて見た気がしなかったんだよね」

「・・・!」

百合香が息を飲んで黙り始めたのは知っていたけど芳樹は話を止められずに続けます。

「俺百合香と初めて会った時、初めてって気がしなかったんだよね。誰かに似てるとかそういうんでは無くて。うまく説明できないけど・・なんか俺この人知ってるって、なんと無く」
「で、今日見た幻みたいな姿も、それも知ってるって、そう思ったんだよね。なんかその姿お姫様か女神様みたいでさ」

「でも不思議なのは、その姿を見た時驚いたり不思議って思うよりなんだかすごく懐かしい感じがしてね・・」

「それにさっき席に着いた時にもすごく不思議な感じがしてさ、デジャブってやつ?」
「初めて百合香と話をするはずなのに、随分前に何度もこうして話をしていたことが頭に浮かんだんだよね」

 最初は怪訝な顔で聞いていた百合香が、話を続ける内に目にうっすらと涙が浮かんでくるのです。
芳樹も芳樹で、一旦話し始めたので、彼女のその反応を知りつつも話を止める事が出来ず、
 今日自分が見た幻やこの場で感じたデジャブ感、
幼い頃から感じてきた不思議な記憶、
心の中に浮かんでくる出所のわからない温かい声のような感覚のようなもの、
 そして百合香に初めて会った時から心の奥底になんとも言えない懐かしさのような、恋しさのようなものが浮かんだことなどなど、

 もう彼女の反応など気にすることもできず怒涛のように伝えるのです。
ひとしきり話すと、はっと我に返った自分が、随分と一人で話してしまったことに気がつき、改めて百合香に目をやります。

 百合香の目には溢れるほどの涙が、やがて頬を伝って流れて来ます。
ハンカチを取り出し、涙をぬぐいながらも、次から次に出てくる涙を拭ききれないほどです。

さすがに芳樹はそんな彼女にうろたえ

「あの、どうした?何か変な話ししちゃった?」
「何か気に障った?」

我に返った芳樹は、今度はせっかく彼女が最初に自分に好意を持ってくれてると感じたのに、こんな話を続けてた事を少し後悔し始めてしまいます。

「あのね・・・」

「うん」
芳樹は百合香の言葉を待ちます。

 

「あのね、芳樹の話、私・・・私ね・・・」
言葉を出そうとすると涙が溢れてくるようで、そのあとに言葉が続きません。

「ゴメン、今日はこれでおしまいでいい?」
「あ、うん、そうだね、随分時間も経ってしまったよね。自分ばかり話してごめんね」

「今度のバイトはいつ?」
「ええと、明後日の15~19時」
「わかった」

そう言うと、百合香は自分の荷物を抱えて、席を立とうとします。

芳樹もそれに遅れまいとテーブルに広げたスマホや小物を急いでバックに積み込み始めます。

すると百合香が
「私先に帰るね」
そう言うとひらりと身を翻し早足で店を出てゆくのです。

芳樹は気が抜けたように椅子に腰を下ろし直し
『だよね~こう言う話をいきなり初めての女の子に話すって、自分どうなのよ!』

なんとも自分は間抜けで、いつも空気が読めなくて好きになる子に振られてきた情けなさが湧いてきます。

百合香に振られたと思った芳樹は、もう完全に廃人となりつつ家に帰り、母親が用意してくれた夕食を大急ぎで掻き込み自室にこもります。

カフェで話し始めた時にメアドとラインのIDは交換していたので、百合香に連絡しようと思えばできます。
でも、彼女の反応が不安で、スマホを持ったまま何もできません。

もともとすぐにクヨクヨしがちな彼ですので、その夜もず~っとクヨクヨの連続で、あっという間に夜中になり、明け方まで悶々とするのです。

芳樹は大学4年生
同級生たちは皆就職も決め、社会人になる準備を始めているのですが、芳樹はどうしても就職という言葉に何か言い知れぬ抵抗感があり、特にネクタイを締めるということを想像するととても自分が会社勤めなどできないと知っていたのです。

父親からは最初口うるさく将来のことや、男の夢などという古くさい話を耳タコで聞かされたのですが、やがて呆れたのか最近では
「まあ、自分のことを面倒見られるのであれば、正社員にこだわらなくても・・」
そう言ってくれるようになっていました。

母親は父親よりもっとぶっ飛んでいて、
「生きると言うことは仕事することではないよ」
などと文科省と通産省の役人が聞いたら激怒しそうなことを平気で言う母親でしたので、卒業後の自分の進路が今だに不明確な芳樹が居場所をなくしてしまうことはありません。

でも母親も
「卒業したら、自分で生きて行きなさいね。スネなんか齧られてたまるか」
としっかり念押しされてもいましたけど。

唯一、妹の加奈だけは違います。
「兄貴は私の反面教師だ、こんな駄目男を見ていたおかげで私は社会人への誇りが持てる!」と

さて、悶々と過ごす日が2目になります。
何もする気が起こらず、授業が2限までだったので、すぐに自宅に戻ってまた悶々。
もう半ば百合香のことは諦めようと思い始めた時、その百合香から連絡が入ります。

ドキドキしながら読むと

「昨日ごめん、急に帰ったりして。私なんかすごくおかしくなってしまったんだよね。うまく言えないけど芳樹の話聞いてたら涙が止まらなくなってしまってさ。ビックリしたよね?明日バイト終わったら会える?」

ベッドに座ってメッセージ読んでいた芳樹は、ベッドからずり落ちてベッドの角で思いっきり後頭部をぶつけてしまうのですが・・

「うお~~!うお~~~!」
隣室の妹が「うるさい!」とばかりに壁を蹴り飛ばすことも意に介さず雄たけびを上げてしまいます。

「うん、うん、いいよう。明日のバイトの後はフリーフリー」
実はバイトの後友人と約束していたけどドタキャン決定。